『ロマンシング☆Starlist sky』



街は灰色。


「雨、か・・・。」
こつん、と小さな音を立てて三成は、額を窓に押し当てた。
市営バスの中は、この時期特有のむっとした湿気で充満している。
運よく空いている窓際の一人席に陣取ったは良いが、憂鬱は晴れない。

まだ夜には時があると言うのに、流れ行く景色はどんより重たく空と同じく灰色だ。

少し前から、小雨が降り出した。
ぽつぽつと、僅かな雨粒が窓にぶつかって銀色の糸を引く。

「残念ですね、今日は七夕だというのに。」

頭上から察したように声がかかる。
見上げると、黒髪黒目の爽やかな青年が残念そうな笑みを作っている。
長身の彼には吊革が低く見える。

真田幸村。
可愛い後輩だ。
湿気にも負けずにサイドの髪が元気に跳ねている。夏らしい真っ白な半袖のシャツから覗く腕が
すげに少し日焼けしている。肩掛けのスポーツバックが妙にしっくりくる。

「そうだな。七夕は、だいたいいつも雨な気がする。」
三成は、つまらないと鼻を鳴らす。

「まあ、梅雨時だからな! 仕方ないだろう。」
無駄に爽やかな笑い声に三成は、「兼続・・・」と友の名を呟いた。

声と同じか、それ以上に無駄にキラキラした男だ。
生徒会長とか風紀委員とか、そういう役がしっくりくる。直江兼続とは、生まれながらにそういう男なのだ。

いっしょに帰ろうと約束したわけではない。たまたま同じバスに乗り合わせたのだ。
一人席に座る三成を囲むように、兼続、幸村、が並んで立っている。
とても目立つ。

「なんでわざわざ梅雨時なんだ。もっと晴れそうな時期にやればいいものを。」
「そうですね! 」
「さすがにむちゃだぞ、三成。」
苦笑する兼続に三成は溜息を洩らす。

「一年に一回の逢瀬が雨ばかりとは、な。間の悪い恋人たちだ。」
「なんだか可哀そうですね。」

「大丈夫だぞ二人とも! 上空はいつも晴れているので、天の川はちゃんと渡れるはずだ☆ 」
「そういうの良いからー。そういう話じゃないからー。」
「兼続殿、ロマンチストですね! 」
「馬鹿ロマンチスト・・・・。」
「ひどいぞ三成ぃ!! 」

がっくり肩を落とす兼続。
そんなことに一切構わず、幸村は三成にぐいっと顔を寄せた。

「七夕と言うことは三成殿は、織姫様ですよね? 」
「んん? 」
「どちらかというと、と言う話です。」
「うーむ。そうか。」
「となると、ひこ星様は誰でしょう・・・・」

もしかして、「私かも? 」と淡い期待を頬笑みに託す。
が、三成は思わせぶりに人差し指を唇にあてる。

「そうだなぁ。幸村は、年下だから・・・若い燕。」
「つばめ、ですか?」

キョトンとした後で、察して幸村は苦笑した。

「つばめ(愛人)ですか・・・彦星じゃなく・・・」
「そう、幸村は年下の恋人だ。」

ふふん、と笑って三成は幸村の額を人差し指で軽くつつく。

「三成、三成、私は?! この直江兼続は、」
「んーーー、兼続は、同い年だからな。同世代の恋人。」

うふっと悪戯っぽく笑う。その姿に兼続ならずも幸村の胸もぐっさりやられた。可愛い。
可愛いすぎるのだ。
そして完全に調子に乗っている。

「で、では、左近殿は? 」
「あー、左近は年上の恋人だ。」
「なんと!! 三成、何人恋人がいるのだ! ふ、ふしだらだぞっ」
「うるさいなぁ。」
「本当は、誰が一番好きなのですか? 」

幸村は、暗に「私でしょう?」と小首を傾げる。

「みんなだ。俺はみんな同じように好きだぞ。」
「うっ」
「博愛主義者だな、さすがだぞ三成。」
「ああ。」

鷹揚に頷くが、おそらく三成は適当以外の何物でもない。

「それでも、三成殿は私のことが本当は一番好きだと信じていますよ。えへへ。」
あざといスマイルをこれでもか、と浮かべる恐るべし弟キャラ幸村。
「うんうん、俺もお前のそういうストレートすぎるところ好きだぞ。」
「やった! 」
「でも、俺は・・・・本当は、」
「え」

「今、一番愛しているのは、・・・・アイス。」

『あい、す・・・・・・・・・・・?』

突然何を言ってるのかしら。異口同音。兼続と幸村は、そろって目を瞬いた。

「アイスだな。うん。気分的に。」
「あ、食べたいものですか。はぁ、そうですね。暑いですもんね。」
「うむ。天の川が見られないなら、せめてアイスが食べたい。」
「そうだな、なんだか私も食べたくなってきたぞ! ふむ。では、帰ったらみんなでアイスを食そう! 」

今にも拳を天に向かって突き出しそうな勢いで兼続が宣言する。
他の客に、「何この人たち・・」という視線を受けたのは、言うまでもない。

「アイスパーティーですね。」
「七夕関係なくなったな。」
「三成のうちでやろう。」
「は? 」
「左近殿も仕方ないから参加させてやろう。」
「うむ・・・・」
「楽しそうですね! 雨でも全然憂鬱じゃないですよ。」
「たしかに。お前たちといると、雨なんて忘れてしまいそうだ。」
「おっ誉めているのか? 」

照れたように三成は唇を突き出す。
「暑苦しいのだよ! 」

「幸村も、三成も私の晴天だ☆ 輝く太陽の如くだぞ。」
「太陽がいっぱいですね〜」
「なにを言っているのだお前たちは、恥ずかしい。」

わーきゃーわーきゃー
騒いでいるうちにバスは最寄りの停留所に滑り込む。




星屑を撒いて、空を飾る。
夢をちりばめよう。

笹の葉も、金銀、短冊もないけれど、君となら土砂降りの下でも構わない。



ロマシンStarlist sky.




楽しい宴はこれからですよ?

END


久しぶりのssです。グダグダです(笑)
高校生パロにしようと思ったんですが・・・設定が生きてない。
そして可哀そうな左近・・・出てきません!
でも、楽しかったです。またssぼちぼち書いていけたらなー、と。
リハビリです、これw