※ (バサラ政宗×三成)のクロスオーバーです! 設定はこじつけです;
『party taime』
「政宗殿、こたびはご足労でした。」
石田三成は軽く会釈する程度に頭を下げた。
なんの感慨もなく言ってくれる。
能面のごとく無機質に、けれど美しい顔を眺めて政宗は苦笑した。
関白秀吉の招きに応じての上洛。たしかに「ご足労」、ではある。
「そっちこそ、随分手際がいいな」
「・・・さようで」
「逗留先まで世話してくれるとは思わなかったぜ、三成ぃ?」
ここは開き屋敷でも宿屋でもはない。
多忙を極め、ほとんど在居していないものの大阪で三成が過ごす
れっきとした石田家である。
「こちらに滞在の間は、わたしが政宗殿の世話役を仰せつかって
おります。」
ため息交じりに言うあたり、不服なのだろう。
容易に想像できることだ。
この男は誰かが用意した台詞をそのまま言っているにすぎない。
その誰かとは、もちろん秀吉なのだろう。
だが政宗は気にした風もない。
ぴゅうっーーー
口笛の甲高い音が静かな部屋に響く。
「いいねぇ、」
「は・・・?」
突然のことで呆気にとられた三成は、珍しく無防備にぽかーんと口を
開けている。
それをいいことに政宗はずいっと畳の上でひざを進める。
「まさむ、」
急に近づいた相手の雰囲気におされる。
三成は思わず後ずさりかけたが、政宗がそれを許さない。
素早く逃げる細い手を取って政宗は精悍な顔に肉食獣を思わせる
野性的な笑みを浮かべた。
「な、なにを」
(いけない、相手に呑まれては・・・・)
毅然と睨み上げてくる琥珀色の瞳。
とても気が強いらしい。
間近で見れば見るほど整った顔をしている。けれど、女のような
丸みはない。
かわりに彼にあるのは夜気を払うほどの清廉さ。
政宗は「気に入った」と一人、胸のうちで呟く。
「美人の酌なら酒もすすむってもんだぜ、」
「は? 酌など・・・」
「なぁ? 小十郎!」
隣の間で控えていたらしい、障子越しに「はぁ」と小十郎の困った
ような声がする。
「い・や・だ!」
「えー」
「えーっていうか、そもそも俺は美人などではない、というか
いつまで掴んでいる放せ!」
「Aan? あんた鏡も見たことないのか、いいんだよ俺が美人だっ
つってんだからさー。素直に受けとっとけば。」
「なんて勝手な!」
多くの武将、大名に会ってきたが、こんなに勝手な男はいまだかつて
見たことがなかった。
「なんなら、鏡プレゼントしてやろーか?」
「いらぬ! ふつーに必要ない!」
行燈の光の下でも分かる、三成の白皙の面がわずかに朱に染まった。
(ばかばかばか、政宗! 早く放さぬかっっ)
きぃぃ! と頭をかきむしりたい衝動にかられる。
もちろん、実際にはしないのだが。
握られた手首が痛い。
それ以上に引き剥がそうとしても、びくともしないことが痛い。
こんなときどうしたらいいかは誰も忠告してくれなかった。
みっともなく取り乱すわけにもいかない。しかし、このまま為すが
ままというのは非常にいただけない。
「まさ、政宗いいかげんに」
「あぁん?」
焦れば焦るほどに、頬の熱だけが上がっていく。
分かっているのかいなかのか、政宗はただ楽しそうに左目を細め
ている。
(腹が立つ奴だ。)
「そんなことはいいからよ、宴会しようぜ三成?」
「宴会っ? な、なにを急に・・・今夜はもう」
「まぁ、そう言うなって。」
「む、無理だ」
「Why?」
「は?」
鼻白む三成の前で、政宗は盛大に溜息をついた。
それが外国人独特のオーバーリアクションだということに残念ながら、
三成は気がつかなかったのだが。
「な、なに・・・」
「あんたさぁ友達いないだろ」
「はぁ?!」
「だってノリ悪いもん。宴会しよーぜって言ったらふつう
喜ぶとこだろ、そ・こ!」
なぜか自信満々に言われるとこっちが間違っている気になるから
不思議だ。
政宗は「あーゆーあんだすたん?」と、なぞの呼びかけをしてくる。
「う、うるさい」
怜悧な美貌を崩して三成は、むすくれる。
ある意味、贅沢な眺めである。
「いいねぇ」
政宗は、さきとはまた違う笑みを浮かべて頷いた。
穏やかな、だが、どことなく寂しげに見えるのは今までとは打って
変わった落ち着いた雰囲気のせいなのかもしれない。
さしもの三成も、哀愁漂う男に警戒しつつも、聞かずにはいられない。
「な、なにが」
「らしくなってきたじゃねぇか」
「?」
「石田三成の敬語なんか聞きたくねーよ。不気味だぜ」
「・・・・・・・・仕事だ、」
「そ。ビジネスライクってのも悪くないけどさ、あんたのは冷たすぎる。
慇懃無礼よりは、馬鹿みたいに率直な今のあんたがいい。」
「馬鹿は余計だ・・・・俺は、その冷たい、か? 」
「わかってないのかよ、罪つくりだなそれって。」
「だって」
「だーから、なんつうかさ事務的なんだよあんた。心が通ってない
だろ、言葉に」
「そのようなことは・・・・・」
「ない」とも言い切れない。
だが、政宗の言うことは観念的だ。
もっと論理的に言ってほしいものだ、と思わずにいられない。
「仕事に私情は挟まないのが俺の主義だ、だから政宗にとやかく
言われる筋合いなんてない」
「huuuu ま、それもそうだ」
「・・・けど、まさかお前に説教されるとはな」
なぜだろう。
つい、笑ってしまう。
くすり、と艶めく笑い声が洩れる。
人からすれば小さな微笑み。けれど、政宗には違った。
「あんた気付いてる? さっきから私情はさみまくりだよな、俺といるときは
仕事モードじゃないって受け取っていいのか」
「なにを、お前に労力を使うのがもったいなくなっただけだ!」
「はは、それでもいいぜ、ちょっとは進展してんじゃん」
じゃんて。
勝手な男だ。と、三成は静かに溜息をつく。
「さて、治部少あんたの仕事はなんだ?」
「お前の世話役だ。」
不承不承といった感じで言う。
「だったら決まりだな宴会しようぜ。盛り上げ役も、たいそうな料理も
いらねぇ、あんたと飲みたいね」
「二人で、か?」
半信半疑で尋ねる三成に、政宗はくったくなく頷いた。
「こんな時間に客は呼べんぞ。俺と二人でいてもつまらんだけだぞ」
「分かってねぇな。俺が楽しくさせてやるよ」
「勝手な上に自信家な男だなぁ、お前は。」
「褒め言葉だろ、それ?」
にやっと笑う口元に鋭い犬歯が覗く。
嘆息して三成は、わざと声を張った。隣の部屋まで聞こえるように。
「ならそこでお前を心配している部下はどうする? ずっとそこに
控えさせておくか。それとも俺に寝首をかかれるのが怖ければ
入れてやったらどうだ。」
挑発的なもの言いに、政宗は困ったな、と頭を掻く。
「やっべ、小十郎のこと忘れてたわ〜」
「ひどいな・・・・」
腕を取られたままの三成が形勢逆転とばかりに見上げてくる。
どうする? と問いかけるのは意地悪な瞳。
三成をとるか、忠臣をとるか。
「どっちか選べってか、Ah〜 あんた見かけより腹黒いな。」
「バカ者、入れてやればいいだろ。そして放せ。」
大人しくしていると思ったら悪知恵ばかり。
口を開けばこれだ。
仕方ない、と政宗は肩をすくめた。
「あーー、小十郎っ 悪ぃな。朝まで時間つぶしててくんねー?」
忍んでいていも聞こえてくる溜息。
「小十郎は腹痛のため今夜は早々に寝所に参りました。ですから、なにも
聞いておりませんし、ここにもいませんでした。で、いいですよね筆頭?」
三成にも、苦労性の忠臣の顔が浮かぶが政宗は苦笑して頷いている。
「では、朝に。」
「って! おい、誰も朝まで付き合うとは言ってな・・」
まったく口を開けば可愛くない。
政宗は掴んでいた腕をさっさと引いて三成を抱きよせた。
すっぽり腕の中におさまる痩身。抗議するうるさい唇は実力行使で黙らせてしまう。
「Let's パーリィ 楽しもうぜ、悪いけど朝まで離す気ないぜ」
「あのなぁ・・・・」
END
筆頭・・・会話中に英語入れるの難しいデス。
政宗様がすぐに三成を襲おうとするので大変でした;
クロスオーバーって難しい! でも楽しかった・・・かな。
モドル