『だからベルを鳴らして!』
「ほんまにクリスマス休暇がほしいわ〜。働きすぎやない俺?」
「な、な?」っと迫ってくる小西行長。
うっとうしそうに三成はそんな可哀そうな友人に向かって「しっしっ」とすげなく手で
払う仕草を返す。
「働きすぎかどうかは疑わしいが、とりあえず全国的にイヴは平日だ、行長。」
「せやからあ〜」
「あん?」
「なんやさきっちゃん怒ってるん?」
キッと見据えられてさすがの行長も苦笑した。
「怒ってない。ただお前が・・・」
「うんうん」
「聞いてないだろ、もういい。というかお前、まさかうちまでついてくる気なのか?」
「まさか〜」
「この寒いのに迷惑な。」
しらけた視線にも行長はめげない。
にっこり頬笑み返せば三成は溜息顔。だが、これも計算のうち。
三成の手には近所のスーパーの袋。
今夜のおかずを買いに行った帰りだったらしい。丁度そこへ通りかかったのが行長だ。
「ええやん。どうせ、平日なんやろ。」
「今日はクリスマスだ。」
「イヴは平日なのに25日はお祝いするん?」
「うるさい」
「ねー昨日はなにしてすごしたん、さきっちゃん」
吐く息が白い。そんな夕方に行長は元気だ。
「仕事だ、普通に。」
「あ〜だから今日、ケーキ食べるんやね。」
「・・・・ケーキとか買ってないから。家に帰って、なんか温かいものでも食べるだけだ。」
別に言い訳することでもないのだが。三成は頬を膨らませた。
一人でクリスマスを祝う奴と思われたくなかったのだ。とくに行長みたいな賑やかな男には。
「せやったら俺も行ってもええよね?」
「なんで」
「ええやん〜。うち帰っても寂しいんやて。」
「お前、クリスチャンだろ。」
「うん」
「・・・・・一人で祈ってろ。」
「寂しい〜」
「それでいいのか、お前・・・」
「ええの! 」
あきれる三成は無視だ。
ここぞとばかりに行長は畳みかける。
「せやからさ、兄さんも呼んで〜、しゃーないからさきっちゃんのお友達たちも呼んで〜、
ついでにさきっちゃんとこのオッサンも入れてやってな。パーティーしよか?」
「はぁ・・それって吉継に兼続、幸村、それから左近のことか・・・。」
「みんなで過ごしたらええやん?」
「暖かい部屋でさ。」と、言って行長は目を細めた。
「って、俺の家でか!」
「うんうん、どうせ兄さんは暇やし。他の奴らもすぐくるよ。」
「計画性がありすぎないか、行長・・・・えぇ?」
「まさか〜〜」
怪しいものだ。
だが三成は、怒らせた肩をすんなり落とした。
「まあ、仕方ない・・・・か。どうせお前は勝手についてくるしな。二人でクリスマスも嫌だし」
「俺はそれでもええよ!」
「電話はお前がしろよ。」
「ちぇ、まあええ。今日は寛大な心、持たんとな。じゃ、ケーキは兄さんに買ってきてもらお〜」
「・・・(後で絶対、怒られるぞ行長)」
「なぁ、今日のおかずなに? なに買ってきたん、それ?」
「・・・・・・おでん。」
「え」
「いや、だから寒いから! 今日はおでんの具しかないからなっ」
「ぷっ・・・・ぷはははあ! ええやん、それで! おもしろいやん、クリスマスにおでんっちゅうのも」
「うるさい」
「むくれんでよー。な? ええよ、土鍋でぐつぐつしてさ、みんなで温まろ♪」
「ふん、まったく。変な奴につかまったものだ」
「誉めてるんやろそれ〜」
「阿呆か」
なんがかんだで、今年も
――騒がしいクリスマスになりそうだ。
サンタもプレゼントもケーキすらないかもしれないけど。
それでもベルを鳴らして!
今日だけは、温かくいさせて神様。
END.
こんなクリスマスもいいんじゃないかな〜って(笑)
この後はもうカオスな飲み会になったに違いないですよw