『FUNKY IT!』
3、ー詐欺ですね? ー
「ほぉ〜ここが政宗のうちかー」
部屋に上がり込んだ途端、三成は人畜無害の仮面を脱ぎ棄てた。
「せまいな、」
寒かろうと思って熱い茶を入れてやっていた政宗はずっこけかけた。
「き、貴様・・・」
「政宗、これは?」
「なんじゃ今忙しい、」
夏も終わったのに出しっぱなしの蚊取り線香。日本国民なら、誰もが知っているそれ
を指さして三成はなに?と問う。
「はぁ、三成は蚊取り線香も知らんのか。」
「そうじゃなくて、なぜブタなのかと聞いている。」
薄モモ色のブタさんを模した蚊取り線香入れ。どこにでもあるそいつ。
なんでブタ型なのかって。
(し、知らねぇ・・・よ)
「三成、」
「う、うむ・・・」
いれたての日本茶を卓においてやっても、なぜか三成は、そわそわしている。
「なんじゃ、もしかしてお前、コタツも知らんのか・・・?」
最近出したばかりのマイ電気コタツ。
実家にあったような大きなものではないが、一人か二人入るにはちょうどいいサイズ。
なかなか気に入っているのだ。
「知っている・・・が、使ったことはない」
「冬、寒くない?」
「実家はここより温暖だ、それに、床暖あるしエアコンとか、ヒーターとか、ハロゲンとか、
いろいろあるだろう。」
「あーはい、はい。石田さんちはお金持ちでしたね。」
どんだけ現代っ子だよ石田三成。
最近のコタツ布団は色も柄もスタイリッシュなのに。
セレブな生活をしてきたんだろう。
まんま、ひ弱そうだな。と、思ったものの興味深々でコタツに入る三成の姿は微笑ましい。
「あまり、あたたかくないのだな」
「コタツ点けてないからな、」
「・・・そうか。」
「ふうん」、と言う顔はがっかりしたというより楽しそうだ。
白っぽい天板を撫でて目を和ませている。
こんな小さなことで喜べるのかこいつは。
(きゅんっっ と、くるではないか! こやつめッーーー!! くそっ馬鹿め! どうするんじゃ)
ふ、二人っきりだよ??
ド、ドキドキドキドキ・・・・・ドキッ
「政宗ぇ、」
コタツ効果で対坐する二人の距離は意外と近い。
「ひっ! な、なんじゃ」
上目づかいで三成が唇を尖らせる。
「お茶菓子は?」
「だっ・・・・・・・!!!!」
「だ?」
―――この野郎ぅ。
無言で立ち上がると政宗は台所へ向かった。
どんっ
「これでも食って、ちょっとは黙っておれ。」
「なに、これ」
我ながらよくあったな、と思う。プラスチックの菓子皿に溢れるほど米菓子を盛ってやった。
「ポン菓子。」
白くてふわふわ。米そのままのかたちながら、甘くてクセになる味のメジャーな駄菓子だ。
「ふうん・・・貧乏くさい。が、ないよりましだ。あ・・手がべたべたするな?」
(うわっ文句多い!)
「ウサギになった気分だ。」
どこがウサギなのかは不明。
だが、ちまちま、ぽん菓子を一つまみ摘んでは口に運ぶ三成はたしかにちょっと
草食動物っぽい。
シュールな画だ。
育ちのいい三成が駄菓子を貪っている。
が、政宗はだんだん心配になってきた。
「三成、いつからうちの前にいたのだ?」
「3時くらいから。」
「3時?! 」
政宗が自宅アパートに帰ってきたのは、四時半過ぎだ。
「今日、大学は?」
「行った、が午前しか講義はなかったから・・・いろいろ時間を潰してー、それでここにきた。
お前がいつ帰るか分からんからな。」
三成は「待ってた。」と事もなげに言う。
「あ、阿呆か・・・風邪をひいたらどうするんじゃ! 」
「傘がなくて移動する気にならなかったから、なにを怒ってるんだ政宗は。」
「なんで傘も持ってない? 朝から降ってたじゃろうが・・・」
「俺が出た時には降っていなかった」
つん、と顎を反らせる三成。
「うう〜お前と話してると頭が痛い・・・天気予報ぐらい見んか!」
「テレビがない。」
「は?」
一瞬ぽかーんとしてから、政宗は次の瞬間なぜか嫌な汗をかいていた。
「みっ三成、昨日はどこにいたんじゃ?? 兼続のところにおったんじゃないのか? え!」
「うるさっ」
三成はいかにも迷惑そうに政宗を見つめながら耳を塞いでしまう。
「それじゃお前、兼続のうちにはテレビもないのか?!」
「だから、兼続のところはいろいろあって出たと言ってるだろ!」
「だから、昨日はどこにおったのかと聞いてるんじゃろ?」
「・・・・・政宗には教えない。」
「は? なんでじゃ?」
「言いたくないからだ。」
多分、追い詰め過ぎたのだろう。
「・・・・・」
急に問いただすようなマネをしてしまったのがいけなかった。
(あ、案外、ナイーブじゃな・・・コイツ)
無口になった三成は子供のように拗ねて唇を尖らせてしまった。
きっとこの人には真正面からぶつかってはいけないのだ。
責めれば責めるほど頑なになるばかりだろう。
(よ、よしっ! ここはわしが大人になるしかあるまい、優しく聞いてやろう)
「うっうむ・・・三成? しかしなんじゃなー、雨、降りやまんな〜」
「あ? ああ、そう・・・だ、な・・・・ふぇくしっ!!」
「?」
「ふぇ、ふぇくっしゅ・・・うー」
冷たい、と言って頬にかかる髪を摘む。
「お、お前、なにしてるんじゃ! 濡れておるなら早く言わんか」
「最初から寒いと言って」
「ええい! いいから」
まさか雨に濡れているとは思わなかった。だが、よく見れば髪の先が湿っている。
「早く風呂に入らんかっ」
「え」
「風呂?」と繰り返す三成の頬がょっと赤く染まる。
「え、いやそういう意味じゃなくて・・・」
「どういう意味だ?」
(こいつッ!)
そろそろわざとじゃないか、と疑い出したが風邪をひかれても困る。
「今、沸かしてやるから、コタツ、コタツじゃ。ほれっ取りあえずこれで拭いておれ!」
ぽいっとタオルを放って、コタツのスイッチを入れて、・・・八面六膚の働きをする政宗。
風呂場に向かおうとするその背に、三成はぺたーっとコタツの天板に頬をつけたまま
声をかける。
「政宗〜、」
「なんじゃ」
「腹へったー」
「!?」
ここで切れてはいけない。
政宗は必死で堪えた。
間を置いて。
「・・・風呂入ってる間になにかつくっておくから、」
「ふむ」
取りあえず、偉そうな三成を放っておいて政宗は浴室へ向かった。
その背を三成は欠伸を噛み殺して見送った。
(なんだかんだ言っていい奴だな。政宗)
と、勝手な評価を下していたのだった。
to be conetenued....?
つづきますよ〜。それにしても書いてて楽しい(笑)
こういう我が儘ぷーな殿って他ではあんまり見かけませんよね;
キャラ崩壊なのかな・・・
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