『FUNKY IT!』
7、 ―そろそろ寝ませんか?―
「それで、」
「あ? なんじゃ。」
「政宗、機嫌が悪いのか。」
お前のせいでな。とは、言わないのが大人の対応だ。政宗は力なく首を振った。
すでに政宗は、三成と付き合っていくには、こちらが折れるしかないのだと
短時間で学んでいた。
「悪くない、疲れただけじゃ。で、それで?ってなんじゃ。」
「うん、どこで寝る? 」
「ぶふっっーーーー!!!!」
とんでもない不意打ちに政宗は、飲んでいたお茶を吹き出した。
「なんだ? 汚いなぁ」
「ばっ・・・うるさっゲホゲホッ」
「まったく、せわしない奴だ。」
綺麗な顔のままで三成は溜息をつく。本当にもうそれはそれは、綺麗なままで。
仕方なく政宗は自分でテーブルを拭くしかなかった。
冷酷無慈悲な女神様だって、もう少し心配してくれるのではないだろうか。
「ね、寝るって」
「だから、俺はどこで寝たらいい?」
「あ、」
そのことについてまったく考えていなかった。と、言えばウソになる。
好きな子と同棲して〜なんて妄想は男ならずともやってしまうものだろう。
だが、いざこうして三成がうちにやってくると想像とは大違いだ。
何もかもが突然すぎて対応にあたふたしつづけている。
こういうとき恰好よく、「俺はソファーで寝るよ。」とか言えないのがアパート
暮らしの悲しいところ。
「あの、な・・・三成、分かってると思うんじゃがうちは狭い」
「分かってる。」
「う・・・遠慮というものを知らんのか、」
「客間、」
「なんてものはない! 」
「言ってみただけだ。見れば分かる。」
悔しいがその通り。一人で住むには十分だが、成人男子二人で住むにはどうだろう?
相変わらず三成は涼しい顔をしている。
「わぁーった、お前どこでもええじゃろ? 」
「いい。」
「今日はここで寝ろ。布団は貸してやるから、心配するな」
「政宗はどこで寝るんだ?」
きょとんとした顔で見つめてくるな。
「と、隣が寝室なんじゃ。」
薄い襖の向こうは政宗の万年床だ。
さほど広くない四畳半ほどの寝室だ。
備え付けの押し入れがあるものの、小さめの箪笥も置かれている。
少し片付けなければ狭さは解消できそうにない。
もちろん畳の部屋にベッドなどあるはずもない。
実家から持ってきた羽毛布団で毎日健やかに眠っているのが現状だ。
といってもマメな彼はきちんと晴れた日にはベランダで布団を干している。
だから、清潔なのは確かだが、かなり生活臭がするのも間違いない。
「ふうん。そうか。」
「掛け布団は冬用のがあるんじゃが、お前の分の敷布団はさすがにないからな。
今日は、コタツ布団でええじゃろ?」
「はーーーーーー?」
「明らかに不満そうな顔するな!」
コイツ本当に疲れる。
とほほ、と肩を落とす政宗に三成は微笑みかけた。
「お前の布団でも我慢してやるぞ?」
「ぅがあああああ」
血管がブチ切れそうになりました。
高血圧で死ぬ人ってこんな感じかな? と、思ってしまいました。
苦労人政宗さまの受難が終わらない(笑)
まだまだ続きそうです。
モドル