※ 完全に病んでます! 電波注意。 暗いの嫌っ という方は回れ右です;


『INSOMNIA』


堕ちて行くのが好きみたい
だから、助けてなんてくれなくていいよ、


「は、ぁ・・・あっ」


「三成さん、」

呼びかけに三成は答える気がないらしい。
ただ苦しそうに飲めない酒に飲まれている。



「ねえ、三成さん、いい加減やめておいた方がいいですよ、あんたそんなに
 飲める方じゃないでしょう?」

肩にかけられた手を払った三成はボトルに縋って、グラスを差し出す。

「いい、いいから・・・左近も飲め」
「帰り車ですって」
「・・・だからぁ? 」 

すでに呂律は回っていない。
「くるま、乗れないっていうなら・・・べつに帰らなきゃいいだろ」
まどろみかけた酔眼にじっと見つめられては左近も溜息をつくしかない。

「どうしちゃったんですか急に、あるだけ酒もってこいなんて。」

らしくない、と思う。
素性もなにも知らないのだから、三成の性向を語る資格がないことなんて重々
承知している。
だが、少なくともこんなに荒れた彼の姿を見たことはなかった。


部屋につくなり無言で床ばかり睨んでいた。

その前のデートで落ち度はなかったと思う。
機嫌は最悪だったが、泣きだすことも喚くこともなく、大人しくテーブルについて
一緒に食事をとった。

文字通りのフルコース。
というよりいつもと同じ定番コース。
安くはないホテルに部屋をとって、レストランで食事。


それが部屋につくなり、

「飲みたい、」
「え?」

「頼んでもいいよな、」

上目使いに言われれば悪い気はしないが、その言葉に甘さはない。
まるで申し出を断られることなど頭にないらしい三成は、すかさずフロント直通の
電話に手をかけた。

「ねえ、三成さん飲むってお酒、大丈夫なんですか?」

その背に問いかける。
何度も一緒に食事をしたが今まで、三成が酒を飲んでいるところなど見たことが
なかった。

「ああ、・・・・・あ、もしもし・・・」

「三成さーん、俺が選びましょうか? 」

普段、酒なんて飲まないのだろう三成は眉根を寄せて、電話の向こうの相手との
やりとりに戸惑っている。

「いい、なんでもいいから。」

そう言って三成は適当にメニューから、一列分の酒を注文した。




「ぁあ〜・・・もうっ、頭痛い・・・・」

泣きながら飲む酒が旨いはずもない。

シャンパン、ワイン、名も知らない酒に手を出す三成。
空になる前に飽きられて捨てられたボトルが、テーブルの上に、絨毯に、
ところ構わず転がされる。

「・・っはぁ・・うぅ・・・・」
頬も耳も赤く色づくのに、項垂れた髪の間から覗くうなじは、その白さが目立つ
ばかりだ。
飴色のテーブルに突っ伏しながら傾けられるグリーンのボトル。

「やめなさいって、見てるこっちが胃が痛い。」

まだ飲もうとする三成からボトルを引きはがし、取り上げてしまう。

「なん・・・・・なんなの・・・?」

「なんなの?」 はこっちの台詞だ。
左近は浅く溜息をつく。

「らしくないですね、どうしました? 酒でも飲まなきゃやってられないことでも
 ありましたか」

「・・・・らしいって、」

「?」
「らしいってなんのことだ、・・・・俺にもわからないのに、ははっ・・お前に分かるって
 言うのか?」
「三成さん、」

「ごめん、左近・・・飲みたい、」

返して、と手を差し出す。

なぜこれほど乱れるのか、それは彼にも分からない。
教えてほしいと嘆く。


「助けてほしい」と言えないから、多分 ―――――壊れていく。



三成のまどろんだ瞳からはなんの感情も読み取れない。
「もう十分飲んだでしょ? 深酒してもなんにも忘れられませんよ。それにこんなに
 いろいろ頼んじゃって、チャンポンで飲むと体に悪いって知らないでしょ、」

無言の睨みあいは長く続かない。
根負けしたのは三成の方だ。

「返して、くれないのか・・・・いじわるだな」

手を下ろして、おかしくもないのに薄く微笑んだ。

―――酔いつぶれて苦しいのか、それとも自分が欠陥品だからいけないのか、
     とにかく頭の中が混乱する。

(・・・・・キモチワルイ。)


「だったら、・・・左近、」
「?」

おもむろに立ちあがった三成は、ふらふらと、そのまま左近の胸にもたれかかる。
スーツごしでもわかる逞しい体つき。
首に手を回して、三成の白い指が左近のネクタイにかかる。

「お前が、忘れさせてくれればいい・・・・」

「なにを?」

「全部、だ。」



*     *     *    *    *     *    *



「ーーっぁ・・・・は・・、・・」

天井がぐるぐる回る。
キモチワルイような気持ちいいような、よく分からない中で、三成はただ左近の
背に爪を立てた。

「三成さん、」
「なに、――?」

誰を見ることもなく透過して天井ばかり見つめる琥珀色の瞳。
呼びかけた時だけ、虚ろな瞳は左近のもとに戻ってくる。

「酒に飲まれてる間はいいですけど、変なクスリに手ぇ出しちゃ駄目ですよ」
「ぇ・・薬?」
「わからないならいいんですよ。」

冴えない頭を回転させようとしているのか眉間に皺を寄せた三成。
そんな様子が可愛くてつい、笑みがこぼれてしまう。

「こんなことばっかりしていたら、客の中にはヤバい奴もいるでしょう?」
「なに、合法ドラッグってこと・・・・・そんなに俺はバカじゃない」
「わかってますよ、三成さんは聡明で賢い人だ」

そう言いながらも本当に分かっているのか心配だ。
世の中、いい奴ばかりじゃない。
飲めない酒を飲まされることも、違法すれすれの媚薬を持ち出す奴もいる。
客に強制されたとき彼は断れるだろうか。

三成の持つ不安定さは危うい。

「聡明も賢いも、どっちも同じ意味だろ、」
「そうですっけ? まぁ悪いやつにはついてっちゃ駄目ってことでしょ。こんなこと
 してたらいつか痛い目見ますよ」

「お前、いつもそれだな・・・・」

呆れたように笑って、三成は重たそうに瞼を閉じる。

「おやすみなさい」
そう左近が呟くのが聞こえたような気がする。



 ※ insomnia/不眠症                      To be continued・・・?


あかん。今回はダメですね。
殿が、ダークというか迷走入った。(わたしが悪い;
メニュー見て「ここからここまでください!」やってみたかったんだ。
どんだけお金かかるんだろ・・・ごめ、左近・・・ごめん
もどる。