※行長が三成を「佐吉」と幼名で呼んでいますが、現パロです。
『この僕の想いを!』
「好きやで、さきっちゃん!」
一世一代の告白を、綺麗な顔してこの子はあっさり切り捨ててくれる。
くるりと振り向いた佐吉は、いつにもまして不機嫌そうな顔をしている。
「は? ええーなにそれー、俺ちょっと今、耳がおかしくなった」
「ちゃ、ちゃうねん! 冗談と違うで、あんな、あんな!」
「まぁ落ちつけ。」
勢い余って飛びついてきそうな行長の眼前に、ぱっと白い手の平をつきつける。
「う、うん・・・・」
「で?」
「せやから〜、俺はな、さきっちゃんのこと・・・すっ好きなんや!!」
言ってやった。言ってやったのさ。
とうとう幼馴染の枠をぶち壊す時が来たのだ。
行長こと、小西行長は興奮気味の面持ちで長かった今までのことを回想していた。
初めて見たときから、佐吉は他のどんな子供より可愛かった。
利発そうで、愛らしい。
それでいて子供ながらに他人を寄せ付けない孤高の感があった。
そう、幼稚園の頃からずっと。年少さんの頃からずっと。遠足で手をつないだ時も。
お昼寝の時も。可愛い佐吉の虜だった。
来年の春、二人はそろって同じ中学を卒業する。
年の瀬の迫った今としては、そう遠いことではない。
それにこれからは、違う高校に通うことになる。
「あんな、さきっちゃんは・・・俺のことどう思う?」
黙したままの佐吉は、なんとも言いようのない顔をしている。
「どうって言われてもなぁ。」
「俺のこと好きやない?」
「うーん」
佐吉が誰に対しても媚びるところのない少年なのはよく知っている。
だから、彼がお情けで「いいよ」と言ってくれないことなど百も承知なのだ。
それでも、こんなときくらい笑顔の一つでも見せてもらいたい。
「さあ。」
儚い行長の願いも知らずに佐吉は、あっさり考えることを放棄した。
「分からない。」
「は・・?」
「そんなこと分からない。俺にとって、お前はまあ、数少ないうちの友ではある。」
「あ・・・はぁ、それはありがとさん」
とりあえず、友達ではあるらしい。
情けないかな行長は、そんな些細なことで安堵していた。
「好きやないの?」
「嫌いじゃない。」
「それって・・・なに?」
「普通・・・?」
「あかん! ふつーってなんか、一番あかんやん? 恋愛に発展しなさそうやないの!!」
「そ、そう言われても・・・。」
窮した三成は赤いマフラーに口元までうずめてしまった。もう喋りません、の合図らしい。
「す、好きなヤツでも」
「別に。」
「まさか! 兄さんか、兄さんなんかぁあああ」
「こらっ勝手なこと言うな!」
兄さんこと大谷吉継は二人の幼馴染である。同年代ながら、その落ちついた言動から
行長は吉継ぐ「兄さん」と呼んでいた。
日ごろから、なんとなく頭の上がらない相手である。
「ああ、もういい。帰る。」
「あ、まってや! さきっちゃん一緒に帰る〜」
あっさり振られてもここで引き下がらないのが、行長のいいところ。
足早な佐吉の背を追い出した。
* * * * * * * * * * *
あれから何年?
指折り数えるのも面倒なことだ。
「さきっちゃん、結婚しよ!」
「行長しつこいっ」
ブルーストライプの入ったシャツがよく似合う。お仕事帰りの三成は鞄で行長を
殴った。
「なんでや〜! 俺と結婚して!!」
いつの間にか少年の告白は、一年に一回のプロポーズと化していた。
もはや二人とも少年ではない。
すっかり大人になった。
それでも、この季節になると行長は懲りずに三成の周りをうろうろしていた。
周りが「佐吉」と幼いころのように呼ばなくなっても。行長だけは彼をそう呼び続けた。
街がクリスマスに色づくころ。もうすぐ一年が終わるこの頃。
「なぁ、なぁ」
「あ〜しつこい! 」
「もう俺、なんでもするって、どうしたら結婚してくれるん?」
「はあ? じゃぁ・・・百年たってもお前がまだプロポーズしにきてたら結婚する!」
「なっ」
さすがにこれはショック。
と、思いきや行長は微笑んだ。
「ええよ、その代わり、さきっちゃん長生きしてな? 俺、絶対百年生きて、さきっちゃんと
結婚するから」
「ば、馬鹿・・・か!」
一瞬、三成の白皙の面に朱が混じった。
「せや、今日は二人の婚約記念日っちゅうことで、な? ケーキ買って帰ろ」
「勝手に婚約するな!」
「ええやん〜。どうせ俺ら百年後には夫婦になってるんやし」
呆れかえる三成には構わず、行長はその手をとった。
何年かかっても構わない。
いくらフラれても、めげたりしない。
そう、
「俺は、さきっちゃんが好きなんやもん」
――― いつか、きっと。この僕の想いを君に届けて見せる!
END.
毎年クリスマスシーズンになると、行長が出張ってきます(笑)
うちだけですかね・・・。行三ありだと思うんですけどね(@_@;)
いつか報われてほしいです!
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