※兄さんを思う雲。


『雨は嫌い』


長雨に陸雲はそっと溜息をついた。
窓の外は昨日と変わらぬ雨、雨、雨・・・。

軒下の土をえぐってさぞかし深い水溜りを作っていることだろう。
まだ日暮には早いというのに、厚い雲に覆われて今日は朝からずっと暗い。


「帰る頃にはやむといいですねえ? 」


「あ、ああそうですね。」

退屈していると思われたのか。
同僚にそう言われて雲は愛想よく笑顔を返した。
机の上に並べられた書類には正直、目がいかない。

「やまないだろうな、」


明日も、明後日も。そう思えるほどに雨脚は強い。

途切れることのない雨音が雲を憂鬱にさせる。

だって、

「雨は嫌いだ。」と、あの人が言ったから。 

きっと大げさに嘆いて、死にそうに憂鬱な顔をしているに違いない。

理知的な漆黒の瞳には晴れた日よりも雨がよく似合うのに、本人は納得しない。
言葉少なげに憂えて、いつもより甘えてじゃれつく。
まるで退屈で、しかたのない猫が爪を立ててくるようだ。


痛いのに、仕方ないから優しくしてしまう。

雨は嫌い。  だけど好き。


だって、あの人が「ねえ」って言って遠慮しながらもすり寄ってくるから。

                                                −fin―


かつてキモイと言われた作品(笑
雲は機兄のストーカーですww