『それでも愛と云うなら』
瞬く瞳の中で炎が揺れた。
裏切りにあい戦に負けた雲は、それでも戦おうと必死だった。
兄上・・・
満身創痍の身でも変わらず空は蒼く見える。
「うあああああぁ」
剣を支えにどうにか立ち上げれば、裂けた脇腹から血が噴き出す。
生暖かい感触と、燃えるような痛みに呻く。それでも、
どうせ死に行く身なら、あの人の役に立ちたいから。
「なぜ立ち上がる!」
「憐みなどいらない。私は死など恐れない! 今更この身がどうなろうと
知ったことか」
本当はあの人に会いたい。
最後くらい、会いたいんだよ。だけど、
「くっふうう・・」
どんなに血が流れようとも、例え何を失くしても、あの日の誓いを守らなくては。
「わたしはぁ・・っ・・戦い続ける、・・・貴方のために!」
「馬鹿な、剣を引け勇気と無謀は違う。まだ戦うつもりなのか!」
男は思わずたじろいだ。
死を覚悟したものの目ではない。
まるで爆ぜて消える赤い炎。小柄な体のどこに、こんな力が残っていたのだろうか。
―――天地神明に誓って私はあなたを裏切らない。あなたの前に立ちはだかるどんな
障害も、私がすべて燃やし尽くしてみせます。
そう誓った。
「お前は、・・・どうしてそこまでするのだ」
「あなたには分からないでしょうね、」
苦しいはずなのに、雲は笑った。
「お許しください兄上。」
分からないだろうと言った、その瞳で雲は剣を構える。
真っ直ぐに、己よりも、死よりも、ずっと先にあるものを見つめている。
「兄上のところには行かせない、私は、・・・ここであなたを斬る!」
― 了 ―
誰にも負けない信念を持っている。だから雲は誰よりも強くいられる。
愛する兄のため、そして己の信じた道のため、戦い続ける。
暗いな〜。でもこれが雲の本質って思って書いてみました。