【相互SS】特別な人 清正×三成



麗らかな昼下がり、清正は鍛錬をしようと槍を持ち正則の部屋へと向かった。
しかし丁度入れ違いでねねの使いに出たと侍女に聞かされ、さてどうしたもの
かと廊下を歩く。

一人で鍛錬する事が嫌だと言うわけではないが、実戦を考えるのであればやはり
誰かと競いあいたいものだ。

そう言った相手ならばもう一人いない事もない。しかしその相手を扱うには矜持が
高すぎた。

以前、三成が部屋に籠もりがちだとねねから聞かされた清正は気分転換に鍛錬でも
しないかと話を持ち掛けた。すると三成は眉間に皺を刻んでお前もか、と酷く立腹した
様子で清正を睨みつけた。

あとから聞くと正則が先に訪れ三成を鍛錬に誘ったらしく、しかしいつの間にか口論し
てしまったのだと言う。

間が悪かったとしか言いようがないが、もしあの時清正が先に声を掛けていたらどんな
結末になっていたのか、そう思うと自然と足は三成の部屋へと向かっていた。


大坂城で最も人通りが少ない奥の部屋が三成に当て行われている。執務に集中出来る
ようにと秀吉の配慮らしいが本人が望んだとも聞いている。

奥へと続く廊下を曲がると清正は眼を見張った。
障子は開け放たれ、部屋に籠もりがちの三成が庭へと続く廊下に腰を下ろして
ぼんやりと木々を見つめていた。

風に靡いた紅い髪から覗く首の細さや、遠目からでもわかる扇のように長い睫毛が
ゆっくりと瞬く度に清正の心は高揚していた。

「…何だ」

「!…あ、いや…」

とっさの事で対応が遅れた清正は柄にもなく言葉を詰まらせ沈黙した。

「…座らないのか?」

今まで庭へと向けていた視線を清正へと移した三成は不思議そうに首を傾げた。
その稚拙な仕草に綻びそうになる反面、三成の雰囲気に些か懸念しながらも隣に
並び腰を下ろした。

「執務は終わったのか?」

「…まだだ」

「何かあったのか?」

「…左近に筆を取られた」

「その左近はどうした?」

「…茶を煎れてる」

「………、三成?」

「…ぅん?」

「っ…」

明らかにいつもと違う反応に不安になった清正は庭の木々から三成へ顔を向ければ
同じように見上げてきた三成と視線が混じる。

そこには横柄者と言われる智将石田三成の姿は無く、とろんとした眼差しと柔らかい
雰囲気を醸し出した三成がいた。

よく見ると眼の下には隈があり、執務に構かけてここ数日まともな睡眠をとって
いないのだと分かる。
左近が筆をとった理由を悟った清正は確かに過ぎたるものだと思ったがやはりどこかまだ
腑に落ちない様子で三成の頬へと手を伸ばす。

「ん…温かい」

舌っ足らずな甘い声音で自ら手のひらに擦り寄る三成が猫のようで、清正は苦笑を
浮かべながらもう一方の手で三成を自身の肩に引き寄せた。

「左近にはするなよ」

「…ぅん」

「正則もだ」

「…ぅん…きよまさ、だけ…」

「あぁ、わかってる」

寝息をたて始めた三成のあどけない表情を窺いながら清正は殊更優しく三成の髪を
梳き、額から目尻へ目尻から頬へと口付けた。

「     」

本来の目的も忘れ、ただ先の三成の言葉を反芻するだけで満たされた清正は抱き
寄せた三成の耳元でそっと囁いた。


ありがとうございます剣さん! きよましゃ・・・かっちょいいぜ☆
こんな素直な殿、うちにはいない(←軽く反省。)
これからもよろしくお願いしますww
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