※ やっぱり三成はすでに死んでいます!
大阪の陣。幸村の一番の見せ場。(でもなんの参考にもなりません;
『消されぬ思い』 ー 幸村編 ー
あなたのために、勝って見せます三成殿。
どうしてだろう。
どうして死ぬことが怖くないのだろう。
武士だから?
いや、違う。
麻痺し始めた感覚に幸村は顔を顰める。
満身創痍とはこのことか。どうやら大阪城の陥落は避けられそうにない。
自分で言うのもなんだが、まあ、よくやった方だな。
戦場にあって、こんな状況だというのに自然と笑みがこぼれた。
みんなよく戦った。
ここにいるものはみな、一度、全てを失った者たちばかりだ。
城に籠る、淀君も秀頼様も。
かきあつめの兵たちも。
家族、友、地位、志、あらゆるものを奪われた。
彼らは朗らかでさえある。荒くれ者だが、死に花を咲かせたがっている。
屈辱に塗れて生きるより、己の魂を取り戻すために、なんだか気に入らない世の中に
一矢報いるために立ちあがった。
死ぬことが怖いんじゃない。
無為に死んでいくことが怖かった。
だから武士は死に場所を求める。それが賢い生き方でないと知っていても。
なにに惹かれたのだろう。
三成はもういないのに。幸村は大阪城にいた。
思えば、貧しかったり、肩身が狭い思いをしたり・・・人に言わせれば散々な人生だったのか
も知れない。
それを変えてくれたのは、三成。
彼と出会ってからは、なにかに導かれるようにここまで進んできてしまった。
人が言うほど、悪くない人生だった。今はそう思う。
生き残ることより大切なこと。
それはなんだろう。
いつも最悪の中の最善を幸村は考えていた。
どうせ死ぬのならば、ただでは死んでやらない。
折れた旗が戦場を埋め尽くす。
見方には生きている者のほうが少ないか。
だが、
進むしかない。
土埃の中で、赤い影がよろめく。 まだ生きているんだ。
生きている限りは戦える。
幸村は声を振り絞った。
「命を惜しむなぁあッ!! 名こそ惜しめ!! 徳川に何万の兵ありとも、真の男はおらん!
今こそ我らの力を見せるとき・・・わたしとともに道を切り開いてくれっ」
雑兵はいらない。
ほしい首はひとつ。
「家康の首をあげよ! 狙うは大将首だけ!!」
死兵ほど恐ろしいものはない。
退くことがないのだから。
徳川の兵は幸村が率いる精鋭の勢いに慄き、色めき立った。
騎馬も人もない、まるで赤い塊。
赤揃えが雪崩のように家康の陣を襲う。
「いや、幻? 」
側近が、はっと息を呑む。
軍勢はたったの数騎。それも死に損ないの兵ばかりではないか。
「なにをしておる! これしきの兵に」
「くっ真田め・・・やりおる」
家康は脂汗をかいていた。
街道一の弓取り、と称された家康がこの時ばかりは腰を浮かせていた。
古今に兵(つわもの)ありと言えども、家康の心胆寒からしめたのは真田だけである"
と伝えられた戦であった。
――ああ、勝ちたいな。
歪みはじめた視界の中で初めて、幸村は心底そう思った。
家康の陣を前に、地に倒れる瞬間まで幸村は戦い続けた。
まさに死力を尽くした。
地に伏した幸村のその顔は安らかであった。
FIN.
どうなんでしょう・・・暗い、か。
でも幸村を真面目に書くことがなかったので(え・・) 楽しかったです。
家康さま、ちょっとしか喋らん(笑;