※ まだ続いていてます・・・。

『海に行こうよ☆ 4』

 
暑い。
うだるように暑い。
どこにいっても日本の夏は涼しくなんかなれないのだ。

それをわざわざ、灼熱地獄と化した海で有象無象の人込みにまみれようなどとは
とても正気の沙汰とは思えない。

つい先日までの三成は、冷房がんがん利かせた部屋でTVに映るそんな連中を見ながら
「阿呆か」と、呆れていた。
それが・・・。
まさか今、
愚か者の列に自分が加わろうなどとは予想だにできなかった。



「そうだ三成、」

 兼続はいたずらを思いついた子供のような笑みを浮かべる。
「なんだ兼続? 暑いのにさらに暑苦しくなるようなことは言うなよ」 
まあまあ、と三成を手で制すると、大きく深呼吸した。 

 すーはー・・・

「海のバカ野郎ぉぉぉお!!! 」

大音量である。

「え?! 」
 驚くやら人目が恥ずかしいやらで困惑する三成に兼続は白い歯を光らせた。

「海にきて何も言わぬのは海に対する冒涜! つまり不義っっ」

言いきった。
なぜか三成は言い切られると弱い。
こと、この信頼する友に言われるとどうしても疑うことを忘れてしまいがちだった。

「なんだと?! バカ呼ばわりの時点で、すでに不義な気もするが・・兼続が言うのなら
仕方ない気がする!」
「さすがだ三成! 違いの分かる男だ、よし早速、一緒に。」
「俺もか?!」
「そう! ―――せえのっっ」
「う、うむ」

『海のバッキャロぉぉぉおお!!! 』

 二人が他の行楽客にどん引きされたのは言うまでもない。



「三成、そろそろ泳ぐ気になったか? 」
「んー・・・いや。ああ、お前は泳いでくるといい。俺は荷物番でもしながら
 左近を待つから、」
「え」
「左近がきたら泳ぐ。(荷物番交代してな。)」
「そ、そうか」
「気にするな、俺は俺で楽しくやるから。」

 さきほどとは違って放っておいても大丈夫そうだ。名残惜しいのはもちろんだが、
さすがの兼続も海の魅力には負けるらしい。

「では泳いでくる、私の勇姿を見届けてくれ! 」
「ああ、骨は拾ってやる。」
 はいはい、とおざなりに手を振ってやると満足したのか兼続は海に向かって走り出した。

「さてと、俺はせっかく海に来たのだから水攻めの実験でもするか。」

ふふん、と誰にともなく鼻で笑っておく。
  

☆           ☆           ☆            ☆



帰ってきた男が一人。堤防の上でほくそ笑む。

「さてと、ようやく邪魔者が消えてくれたねえ。幸村はイルカになっちまったし、
 兼続さんもぶつぶつ言いながら海に帰って行ったことだし。」

( よっしゃ、殿とランデブ〜☆ ) 

なんやかんやで実はプランは完璧なのだ。それもだいぶ前から。
妄想とも言うがそこは無視。
二人きりの海。いつもと違う雰囲気に、普段はなかなか素直になれない三成も
つい・・・

(―――そして、夕日が沈む海で二人の影が重なる! ) 

おっさんが考えうる最大級の恥ずかしいシチュエーションなら何パターンも用意してある。
まあ、二人きりじゃないのが不満だが仕方ない。
だいたい、左近と二人きりだったら三成は絶対に海になど来たがらない。
そもそも外出好きではないのだ。
おかげで用意したプランも今ではカビが生えているありさま。

今日こそはやってやるぜ。

なにを? とは言わない。

(にゃんにゃんですよ。にゃんにゃん! )

「俺の軍略、今日も冴えてるぜ〜☆ 」

左近がオヤジ笑いを浮かべている頃。

「堤だ堤。」

 三成は一生懸命、トラップもとい、堤(つつみ)を制作していた。



もちろん、この後

「あ、左近お帰り。泳いでくるから荷物番よろしくな。」
とのすげない言葉に左近は打ちのめされたのだった。

三成の無邪気な笑顔が左近の心をえぐる。

彼の軍略が見事に玉砕したのは言うまでもない。

                                                 tobe continued...?


長い。でもようやくここで一段落つきました!
自分の中ではまだつづいてるんですが・・・。
まさか冬になってしまうとは。次は「スキーに行こうよ☆」
とかになるのかな?(12月6日)