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『Jesus Christmas!』


「さっきちゃん、さきっちゃん」

商店街で大好きな人と会いました。
それは神のお導き。
きっとそうだから。行長は勢いあまって、前を行く細い背中に抱きついていた。 


「なんだ小西? 」

「ちょ、名字呼び捨てやめてって! オレらそんな仲ちゃうやん? 」

両手で幼馴染を押しのける三成。
「どんな仲だよ。」という突っ込みはあえて入れない。
そうです、関わると面倒くさいから。

生暖かい視線に耐えかねたのか、急に行長が身悶える。

「あ~ひどいぃぃ!」
「んーーーわかった、わかったから行長、なんの用だ、気持ち悪い」

「気持ち悪いって・・・まあ、ええわ。あんな、さきっちゃんクリスマスって
 知ってる~? 」

にこにこ。
お気楽な関西人が「クイズです♪」と言わんばかりに得意そうな顔をして
聞いてくる。

今や国民的行事と化したイベントをなんと思っているのだろう。
いくらこの手の行事に疎い三成でも、それくらいは知っている。

「キリストの誕生日だろう。」

「あ、まぁそうやねんけど・・・・」

どこかがっかりした様子の行長には気づかず、続けて冷笑する三成。

「はん、クリスマス? イベントと言いながら平日ではないか。仕事だ仕事。」

「うぁっっ 予想以上に冷たいわ~この人! あかん、非国民や」

「・・・・言いすぎだろ」

「いいえ、さきっちゃん! クリスマスがなにする日か知ってるん? 」

「はぁ? 知らん」

「なら、教えてあげます~。」

商人のクセなのかは不明だが、なんだか小西の含み笑いと揉み手が、いかがわしい。

「大切な人と一緒に過ごすんが一番ええねん、な? 」

「は」

「豪勢なパーティーもケーキも、プレゼントも必要やない。ほんまはね、家族で静かに
 過ごすんや。みんなでお祈りしたり、一年に一度、家族のこと思い出したり、いっしょに
 厳粛に過ごすのってええやん? 」
 
「・・・・・」

「どったの? 」

きょとん、とする行長。
ふっと三成の頬がほころぶ。

「案外まともなこと言うな、行長、」

笑ったら可愛い三成だ。本人が思う以上に、その薄い頬笑みにどきっとさせられる。
行長も照れたように頷いて、頬を掻く。

「オレ、まじでクリスチャンやん?」

「ああ、そういえばそうだったな~」

「ひどいな~!」

 笑い合える幸せ。

 聖夜が近付くね。
 今宵、君はダレと過ごすの・・・・

お調子ものだけど、本当に聞きたいことはなかなか言えない。
そんな自分がときどき情けなくなる。だけど、今日は違う。

行長は意を決して口を開いた。

「なあ、さきっちゃん、せやから今日は俺といっしょに過ごさへん!? 」

「すごさへん。」

「え・・・・・・・・・そんなああああ、あっさりと」

「いいこと聞いた、行長、今日は家族と過ごすことにする。ありがと」

じゃあな、と手を振る三成はどことなく楽しそうだった。


*   *   *   *   *   *   *   *   *      


「家族と過ごすんやって、」

パールホワイトの携帯を耳に押し当てながら行長は正面のビルを眺めるともなしに眺めた。
その背後には商店街のクリスマスツリー。
光り輝く電飾に、可愛らしいオーナメント。
子供たちのはしゃいだ声も、今は切ないだけだ。

『ああん? あー・・・そう。』

電話越しの相手の声は明らかに覚めている。
が、今の行長にはそんなことに気づく余裕がない。それに他にかける相手もいないの
だから仕方ない。

「なあ、家族ってなんやろ、誰やろ! 」

『・・・そりゃ家族は家族だろう行長。お兄さんとかお父さんとか、石田家の皆さん
 だろうね』
「兄さんなんでそんなに冷静なん?! 」

『(お前が冷静になれよ)・・・恋人と過ごすとか言われなくてよかったねー。
 行長も家族で過ごしなよ』

「だぁあああーーーーもう、やってられん」

聞いちゃいない。

『お前、こんなことで電話してくんなよ』

「うーーーせやかて・・・・・・・なあ、兄さん?  
                俺といっしょにクリスマス過ごさへん」

『やだ。』

ぷつん。

虚しく音を立てて通話は強制終了。
兄さんこと、頼りになる男、大谷吉継にも断られてしまった。


「・・・・・・ええねん。クリスマスは厳粛な日やもん、寂しくなんかないからーーーーー!!!」


この後、「仕方ないから行長もおいでよ」と兄さんに呼んでもらったのは、また別のお話し。

 END.


なんだこの話し!?
行長・・・・・ごめん。いつもごめん。
クリスマスについての、あれやこれやはテキトーです(え

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