『FUNKY IT!』
1,ー燃えたんですー
燃え盛る自分の部屋を見て三成は「あ」と呟いた。
間抜けな話だ。
友達と飲んで帰ったら、うちの方が騒がしい。うーうーけたたましいサイレンと、
よく分からない人だかりの熱気。
まさか、と思うのに米噛みのあたりが痛い。
これを虫の知らせとでもいうのか。
嫌な予感に焦りながらも三成は意を決してマンションを見上げた。
「三成、」
「え、あぁ・・・」
「大丈夫か?」 と問いかける兼続の表情はぎこちない。見てはいけないものを見た、
という感じだ。
かなり気まずい。
今の自分はそれほどダメな顔をしているのだろうか。
そんなことを考えながらも、ぽかーんと、炎を噴き上げるマンションを見つめる。
茶色いタイル張りのマンションが今は赤く染まって見える。
9階の右奥の部屋。
「あれ、お前の部屋じゃ」
「隣だ・・・」
「え・・・まずく、ないか?」
「・・・・さあ」
炎の舌がちろちろと、窓から見える。
隣の部屋の住人は、今ごろどうしているのだろう。そもそも女だったか、男だったかも
知らない。
熱で窓枠が完全に溶けて落ちてしまっている。
火渡り。まるで生き物のように火は次の標的を探し出す。
勢いの留まらない炎が天井を舐めて、右隣の部屋へと燃え移る。
「あ、移った、燃え移った!」誰かが言うのが遠くで聞こえた。
「あ」
三成の唇から小さな呟きが漏れた。
「これはひどいな・・・」
放水はつづいているのに一向に消える気配のない炎に、兼続も茫然と見上げるしかない。
だが、人間はこんなときこそ冷静になるものらしい。
(これじゃあ、通帳も印鑑も燃えてしまっただろうな・・・。災害保険はおりるだろうか、いや、
火災保険?)
三成は一人、これからの生活のことを考えていた。
「あまり気落ちするな三成、そうだ! 今日はうちに泊まったらいい、うむ。そうしろ三成」
「ああ、そうだな。」
「三成? 」
返ってきたのは平淡な口調。
いったいどうしたのかと心配する兼続の顔を見返して、三成は
「とりあえず、学費は納入済みだから問題ない。」
きっぱり言い切った。
「あ、ああ。」
(・・・はたして問題はそこなのだろうか)
「火災保険に入っておいて良かった」
「そ、そうだな。」
「うん、よかった。」と繰り返すと友人に兼続は得体の知れない不安を感じていた。
混乱してるのか・・・。
それとも。
この子、思い出とか大事にしないタイプ・・・?
−−−to be contenued.